シュラク教授の手紙

 親愛なる我が娘ナスカヤへ

 お前にこの手紙を書けることを、父さんは誇りに思う。
今も体を駆け抜ける歓喜に耐える事が難しい。
とうとうやったのだ。
父さんは終に、今までの考古学史を一変させる大発見をした。
お前が一緒に居たらとどんなにか思っただろう。
 さて、私の感激は兎も角、実際に起こった事を書かねばなるまい。
お前はまだ何も知らないのだから。
我々は、南米チリ沖において、海底を調査していた。
この辺りには言い伝えがあり、昔建てられた巨大な遺跡が眠っている、と言うのだ。
地元の漁師に案内を頼み、その付近の海底を調査した。
初めの2日間は何も発見できなかったが、3日目にそれは見つかった。
助手のクレメンスが巨大な円柱を発見したのだ。
それは直径が10m、高さが50mはあるものだった。
しかも驚く事に、この円柱は1本だけではなかったのだ。
全部で6本あり、それが同心円上に正確に60°毎に建てられている。
我々はこの驚くべき正確さに驚嘆した。
現在の建築技術をもってしても、ここまで正確にできるかどうか。
しかも円柱は全て完全に真円を描いているのだ。
それぞれの柱の上面は驚くほど滑らかで、中央に何か文字が刻まれていた。
我々が今まで見たことも無い文字だ。
その日はもう日没になってしまったので、引き揚げた。
 翌日、我々は再度6本の柱の場所へ行き、そして今度は6本の柱の中央付近に何か無いのか調べ始めた。
すると、巨大な直方体の建物が埋もれている事が分かった。
この建物の上面も驚く程滑らかであり、くぼみ1つ発見できなかった。
驚く程高度な建築技術でもって、建造されたに違いない。
我々は上面をくまなく調査したが、何も発見できなかった。
今度は側面を調査し始めた。
しばらくすると、水夫の1人がライトを点滅させて合図を送ってきた。
何か発見したのだ。
私が行って見ると、そこには入口らしき空洞があった。
少し周りの土を掘り返してみると、階段上に切られた石が出現した。
ここは間違いなく入口なのである!
我々は興奮に胸を躍らせつつ、中へ入って行った。
 入口はかなり広く、大人4人が並んでも問題無いほどである。
階段を登っていくと、やがて広大な空間に出た。
四隅には古代の動物の石像が置かれてあり、中央には祭壇の様な物があった。
そしてそこには3枚の石板が置かれていた。
その石板には、我々が見たことも無い文字が刻まれていた。
早速写真を撮って、石板を外へ運び出した。
海上から石板を引き揚げてもらい、我々は歓喜と共にホテルへ引き揚げた。
間違いなく、我々は未知の文明の遺跡を発見したのだ。
 この偉大な発見の瞬間にお前が居なかった事は残念ではあるが、しかしこれから行う調査活動は手伝ってもらうつもりだ。
お前にも、この偉大な発見者の一員になって欲しい。
とりあえず、石板と遺跡を取った写真のネガを同封する。
私もできる限り早く帰るつもりだが、いろいろと準備があってそうも行かない。
もしできるのであれば、早速現像して調査にとりかかっても構わないぞ。
お前にとっても、非常に興味をそそられる物に違いないからな。
 では、今回はここまでとしよう。
しばらくしたら、会える事になるだろう。
その時を楽しみにしている。

 お前の父より